私が嫁いだ所は、主人の母方の祖父母の住む家です。
一度聞いただけではなかなか理解してもらえないので、詳細は端折ります。
簡単にいうと、主人が母方の祖父母と三人で暮らしている所に嫁ぎました。
なので、親世代不在で、孫夫婦が祖父母の面倒を見るという感じです。
私が嫁いだ時は既に、祖父は認知症でした。
生年月日は言えるけれど、現在の年齢は分からない状態です。
主人の事は名前も、孫だということも分かります。
私のことは理解出来ていない状態。
嫁いですぐには、この事がわかりませんでした。
木の芽立ちの時期に嫁いだのですが、嫁いですぐ、祖父の様子がおかしくなりました。
それから毎年、同じ時期に祖父の様子が豹変していました。
一番辛かったのは、息子が1歳の頃。
祖父の居る部屋の隣に台所があるので、私が食事の準備をする間は、祖母が息子を隣の部屋で見てくれていました。
ある日、いつものように食事の準備をしていると、突然祖父が息子を怒鳴りました。
その声に驚いた息子は号泣。
慌てて息子の側に行くと、いつもは穏やかな表情の祖父が鬼のような形相で私に言いました。
「よそ者が人の家の台所に勝手に入ったり、よその子が勝手に走り回って、さっさと出ていけっ!」
私は一体何が起きたのか分からず、急いで離れの自分たちの部屋へ逃げたのでした。
* * * * *
この突然の出来事で、私の心は折れそうになりました。
翌日、私は家に居たくなかったので、朝から友達の家へ避難して、夕方になってようやく家へ帰りました。
すると、私が家出をしたと勘違いした祖母が、義母に連絡をしたらしく、義母やその妹も来ていて、大騒ぎになっていました。
義母もその妹も「病気だから許してね」と、私に対して申し訳ない気持ちでいっぱいな様子でした。
私は嫁ぐ前から、祖父母の面倒を看ると覚悟していました。
だから、どんな事があっても逃げないと決めて嫁ぎました。
ただ、私だけが怒鳴られたのなら我慢が出来たのですが、訳の分からない息子に対して怒鳴ったのが辛かったのです。
夜遅くに帰ってきた主人は、この事で私に相当負担をかけていると思ったようで、三人で暮らそうかと提案してくれました。
でも私は、自分との約束を守るために、それを拒否しました。
* * * * *
それから数年後、私はようやくこの問題に対する答えを見つけました。
それは、祖父の立場になって考えたのです。
私が住んでいた家は、母屋と離れがありました。
台所は母屋にしかなくて、トイレとお風呂は離れにだけありました。
母屋と離れは、同じ敷地内ではなく、小道を挟んで向かい合って建っています。
よって、色んな人や自転車が通ります。
祖父母は母屋に居て、私達は離れに居ます。
なので、私がご飯を作る時は、離れから母屋の玄関に入って、台所に入るのです。
台所へは、玄関から直接入れるドアがあるので、祖父の居る部屋からは姿が見えません。
祖父の居る部屋は台所の隣で、祖父はいつも台所が見える場所に座っています。
それで気づいたのです。
玄関から直接知らない人が台所に入って、勝手に調理を始める。
これは祖父にとって、恐怖だろうな、と。
だから私は、玄関から直接台所へ行くのをやめて、まずは祖父に挨拶をして、台所を使わせてもらいます、と断りを入れるようにしたのです。
するとこれ以降、祖父が豹変する事はありませんでした。
* * * * *
被害者意識のままだったら、ずっと解決出来なかったと思います。
祖父が本当に恐怖を感じて豹変していたのかどうかはわかりません。
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